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19 March, 2020
CORONA CULTURE ~ 親愛なる友人たち、そしてクライアントのみなさんへ

Li Edelkoort - photo by Thirza Schaap.jpeg

コロナウィルス拡大の中、南アフリカに滞在を余儀なくされているリーエデルコートなのですが、
リーはどう感じている?世界のこれからについて、さらに何を私たちは考えるべき?と問いかけてみました。
するとリーから大切な友人であるクライアントのみなさま、クリエイターたち、みなさんと共有して欲しいとレターがやってきました。

状況は深刻で辛い思いや時間を過ごされている方々が多くいらっしゃいます。
そんな中、常に未来の可能性を信じて発信してきたリーらしく、「再考」という考えや「革新しない革新」といったキーワードを伝えてくれました。

このレターはトレンドユニオンNY、PARIS、TOKYOをはじめ、世界各国にいるエージェントを通じて多くの方に発信しています。

Dear friend and clients,
親愛なる友人たち、そしてクライアントのみなさんへ

昨今のコロナウィルス拡大の状況下、「リーはどう感じている?」と多くの方からお声をかけていただきました。

みなさんと同じく、私もしつこいウィルスに困惑しており、さらに人間の暮らし、命に苦しみや影響を与え続けるだろうと感じています。年齢という観点においても私は危険とされるターゲットグループである高齢者に属し、それゆえに身の安全と検疫に特別に注意を払っています。みなさん、年齢に関係なく、自分を守ってください。

それは自分の健康のためであり、他者の生命を守ることでもあります。

多くの方々が自宅勤務や仕事のペースをスローダウンせねばならない状況だと思うのですが、その中において心の中で進歩する方法を見つけようとしたり、新しいコレクションを考え始めたり、新しい生産方法を整える準備をしたり、さらにはこのまま店舗閉店が続く場合の小売のあり方を再考しているのではないでしょうか。これは大変な作業です。そして私たちはこの種の危機管理には備えができていませんでした。しかしながら、私たちは創造性を訓練された生き物であり、即興性を持って物事を再考することができるのです。この再考ということこそが今やらなければならないことです。
私たちの職業のあらゆる側面を再考すること。それは選ぶ繊維から、デザインするテキスタイル、関連すると思われる衣服、さらにはどのように顧客とつながるかという新しい方法に至るまですべてです。

ある意味、これは私たちの病んだ記録を正し、私たちが将来こうありたいと求める生き方や働き方へとリセットするユニークな機会になるかもしれません。それはすべて時間が課題となります。ワークやアウトプットに関するすべての側面をスローダウンし、生産量を減らし、より良く責任が持てるものを作る必要があります。
このスローダウンという概念が新しい世界をデザインするでしょう。

中国の空を晴らし、ヴェニスの水をきれいにするのに3ヶ月もかからない場合は、私たちは注意して学習する必要があるでしょう。そして代替の、よりきちんとした、持続可能なペースで再び始めてください。旅をする回数を抑え、生産量を控え、汚染を減らすことです。

何よりもまず、シーズンの考え方を変える絶好の機会です。5月にカシミアを、11月にスイムウエアを出荷するのをやめること。ようやく降り出した雪の頃にコートをフルプライスで手に入れること。冬にサマーカラーを楽しむこと。だって気候はすっかり変わってしまっているのですから。あまりにも多すぎる下落を生む脆弱なシステムを止め、しなやかなワードローブを構築する別の方法を作り上げることも可能です。顧客を手触りの良い素材で包み込み、まるで優しく労わるような美しくてベーシックな衣服を届けることができます。そして数点だけキャラクターが立ったものを作ること;もはやコレクションすべてにキャラクターを立てる必要などないのです。新しいソックスでさえ、その役割を果たせるのですから。そして流れ落ちるようなシンプルなイヤリングが人々を幸せにできるでしょう。

この危機の最中にある人々の本当のニーズに耳を傾ける必要があります。というのもそれはウィルスに打ち勝った後の私たちの姿を定義するからです。今まで通りのビジネスに戻ることはなく、まるで何事もなかったかのように糸を引くことはできません。すべてのメンタリティーはより良いものへと変わるでしょう。マネーはレアな商品となるかもしれません。

私の最新のキーワードはUNNOVATION革新しないこと。
「2025年以降の未来のラグジュアリーとは」というブックを2月に発表したのですが、その中でこの考えについて触れており、それはすべてのセクターにおいて未来をリデザインする過激なツールになると言えます

どこに向かっているのか、どのようになるのかと先が見えない中で、もしコロナ以降の未来に対して、これからのあり方など話し合いたいと思われるなら、遠慮なく私たちに声をかけてください。
南アフリカで滞在を余儀なくされているアメリカ支社代表のフィリップと私はいつでもみなさんの問いかけを待っています。

つながりあい、互いに助け合いましょう。
産業を再考するためのフォーラムを始めようと企画しているので、それが具体的になったらみなさんにすぐ共有しようと思っています。

体に気をつけて、互いに労わりあいましょう。

いつもは慌ただしい朝なのに、この状況でもし家にいるのなら、キッチンでトーストの上に載せる完璧な卵料理を試み、歌い、踊り、少しでも幸せな気分で自分を満たしてあげましょう。

私たちは必ずこの危機を脱し、より良い人間となって未来につながります。
私たちはウィルスで命を落とされた人々に借りがあります。
可能ならすぐにみなさんお会いしましょう。

Lidewij Edelkoort
リーエデルコート

dezeen誌によるインタビュー記事はこちら

https://www.dezeen.com/

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