NEWS,Seminar
1 May, 2020
労働者の日:エデルコートからのメッセージ

大変な状況が続いておりますが、みなさまのご無事を心よりお祈りしています。
私たちトレンドユニオンチームでは5月1日の労働者の日に際して、4年前2017−18秋冬シーズンとして発表していたthe labour of love労働への愛を思い返し、
テーマの文章と今回南アフリカから届いたリーエデルコートのメッセージを合わせてみなさまと共有させていただきます。
様々な労働とその衣服、その価値の見直しをまとめたシーズンのサマリーpdfも配信可能です。
ご希望の場合はお問い合わせフォームまたはinfo@trendunion.jpまでその旨ご連絡ください。

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photo by Brian Griffin for Disegno


THE LABOUR OF LOVE
肉体労働への愛

親愛なるクライアントのみなさん、友人たちへ
多くの国で本日5月1日は労働者の日です。
そして今年はみんな自宅で仕事をしているという今までとは違った日になっているでしょう。

チームと協業すべくオフィスに戻る人もいれば、工場を再開したり、もう一度ショップを開けようとしている人たちもいるでしょう。希望は地平線にありつつも、今回のことで受けた痛みは忘れられることではなく、このウィルスとの戦いはまだ終わっていません。みなさんが現実社会に戻る前にオッズを検討し、健康を大切にされることを祈っています。まだまだ困難や課題があるでしょう。
今、多くの人々が仕事を失っており、労働はある意味肯定的な価値を持ち始めたようです;配達、看護、ケアは突如そのトップリストへと浮上しました。まさに私はちょうど労働をテーマにした新しいデザインエキジビションのキュレーションを行っていて、この秋リーユにて開催ができることを希望しつつ進めています。

トレンドは堅実かつよりベーシックに、快適さとシンプリシティーに主導されたものとなるだろうと耳にすることが多く、その中でユニフォームという言葉がよく口にされています。それを受け、労働者の日に際して、私がワークウエアやユニフォームをテーマに2017−18秋冬トレンドとして4年前に発表したものをみなさんと共有したいと思います。どうゆうわけか、新しくよりリアルでより堅実なファッションの訪れを望む現在の状況と相関性があったのです。

みなさんのインスピレーションになれば光栄ですし、より希望に満ちたノーマルの復活を祈りたいと思います。

トレンドユニオンはみなさんに変わらぬ愛を贈り続けます。そしてこの特殊な状況下ではありますが、トレンドユニオンチームは一丸となってできる限りのサポートを続け、クライアントや友人のみなさんと前に進んでいきたいと考えています。

みなさん、お体大事になさってください。そして安全でいてください。
私たちは新しい社会を再び作る仲間なのですから。

リーエデルコート
@lidewijedelkoort


in praise of labour
労働の賛美

一着の服は人の目を惹きつける素晴らしいものになり得て、私たちが演じたり語る必要性さえもないほどに服自体が自分について物語ることができる。衣服は労働し、私たちを導き、保護するために改良されている。それゆえに服とテキスタイルデザインは人間の経験、ファブリックの重さによる跳ね返りや糸の触感、ファバーの高貴さといった科学から始まるのだ。この気づきはファッションデザインの世界に浸透し始め、ポストプラグマティズム(ポスト実用主義)な若いデザイナーたちを生み出し、私たちと同じぐらいハードに働く衣服を作り出している。それゆえに衣服のデザインは最新のマントラとなるだろう。

クリエイティブプロセスにおけるリアリティーチェックの新しい形が生まれ、ノーマリゼーションのプロセスから飛び抜けたクリエイションを生み出す。そしてデザイナーを自由にし、マテリアルやカラーに集中することを許し、普通のものをアヴァンギャルドなポジションへと装飾し、昇華させ、全く新しいファッションセンスの芽生えを促すこととなるだろう。

肉体労働は今後新しいステータスを得ていく。
かつて低俗なマニュアルワークとおとしめられたものが、他のすべての中でも尊敬に値する職業であると認識されるようになるのだが、経済危機や移民問題の両方がこの視野の変化のきっかけだろう。突如として、コンクリートを混ぜることや木を伐採すること、家を建てること、ゴミを清掃すること、鉄を溶接すること、機械を修理することは人から尊敬される職業となる;自分の時間を自分で考えて使えて、社会を構築する要素を組み立てる人たち。それゆえにワークウエアの美意識はファッションへと手を伸ばし、新しいスタイルとして解釈され、それらは打ち捨てられ破壊されたカジュアルクールなものとして喉から手が出るほどほしがられるものとなる;着倒された服という名の新しいトレンド。

過酷な労働環境のためにデザインされ、ボロボロで洗いをかけられ、しわくちゃになったファブリックはダーティーカラーのカムバックを生み出し、それらはよりニュートラルとなる。品質はカシミヤやキャメルヘアやメリノウールといったような高貴なものであり得るのだが、見た目はグランジでこの破壊された社会にフィットするものに。着古され、フリンジになったディテールは勢いを得て、分解された衣服のだらしないフォルムを継続し、シェイプはオーバーサイズ、ディテールはアンダーサイズとなるだろう。

人々のワークウエアはこれからのシーズンを喚起し、様々な仕事に対して現実的に対応するものとなり、そのムーブメントにおいてマーケットに戻ってくるだろう。ファッションは無駄を一掃することで安堵を求め、人々を癒し、他を養い、カラーを栽培し、美を育て、事象のリサーチにモチベーションを探求し、男性と女性のスタイル、デイタイムとナイトタイムの間に架け橋を作るだろう。

これらの様々なインスピレーションには共通点があり、近い未来においてデザインの見方を変えるものとなるだろう。カットは組み立てられ、技術的で、ディテーリングは実用的で実戦的で、ファブリックはパフォーマンス力がありモバイルで、レイヤリングは純粋主義者でシンプル化されている。魅力はボリュームとウエイトによってもたらされる。

パワードレスの古い典型を新しくするために、ラペルは袖、ポケット、ボタンから解かれ、パンツやスカートを履かずただショーツ、レギンスで着用される。ドレスはまるでシャツのようにカットされ、カーディガンは丈短くエレガントに、スカートはマイルドにギャザーを寄せられるかバイアスにカットされる。パンツはよりたっぷりとなり、流麗な動きが可能になる。コートはオーバーサイズで新しいバランスを模索し、より大きな球形をデザインする。シャツはもう一度多様で不真面目なディテーリングを伴いファッションにフォーカスし、多くの場合はよりロマンティックな会話を続ける。

実用主義のアイディアがワーカーたちのワードローブのデザインを先導するにもかかわらず、人間は美やインスピレーションを考慮し続け、ジャカードやレース、ベルベット、刺繍を使い、多くの場合厳格で伝統的なシェイプになりがちなものを装飾して高めようとし、装飾アートを導入する。メカニカルなパターンはエプロンやボイラースーツに反映され、モダニストな色相の線状モチーフはラボラトリーコートやナースドレスを満たし、タイダイのデニムはワーカーズブルーを示唆し、ハードな生地やハードに描かれたストライプはペインタースモックを魅了し、ラッカー仕上げのレースは家事の美を装飾するだろう。

スタイルは生産性高く、誘惑的でもある。私たちの労働服は労働への愛に満ちたものとなるだろう。

LIDEWIJ EDELKOORT
NEW YORK OCTOBER 2015

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